僕はサッカーをしていた。
ディフェンス、守りの選手だ。
超端的に僕の役目を言うならば、ゴールを守ることだ。
試合の中で、相手がシュートを打ってくるとなったら、足を、いや、身を投げ出してゴールを守らなければならない。
それが試合終盤の残り5分という、身体的にもっともきつい時間であっても。
僕が中学生の時にこんなことがあった。
1ー0で勝っている試合。
残り5分もなかった頃だろうか。
お世辞にも強いとは言えなかった僕らのチームが残り5分の段階で1点差で勝っている。
冗談抜きで勝率3%ぐらいの弱小サッカー部だったので、その状況がかなり珍しかった。
「これは勝てる。」
少なからず僕はそう思っていた。
というか周りのみんなも思っていただろう。
中学生の試合は1試合が50分とはいえ、1日に2試合も3試合もするので、疲労は相当なものだった。
その試合も確か2、3試合目だったはずなので、僕もかなり疲れていた。
そんな試合があと5分とたたずに終わる。
しかも久々の勝利。
かなり浮き足立っていたのだ。
試合終盤、相手に攻められる。
だが、言っちゃ悪いが僕らが勝っているぐらいなので、相手もそんなに上手ではない。
そんな相手チームの選手が、苦し紛れにシュートを打とうとしている。
僕の割と近くで。
こんなところから、その体勢で。
そんなシュートは入らないだろう。
そう思い、僕は軽く足だけ伸ばした。
次の瞬間、相手が蹴ったボールが、そのままゴールへ吸い込まれていくではないか。
変な体勢で打ったからこそ変なスピンがかかったボールは、キーパーの頭上を越えてゴールへと入っていった。
僕があの時、足を思い切り伸ばしていたら届いたかもしれない。
身を投げ出して防ごうとすれば止められていたかもしれない。
少なくとも相手にはプレッシャーになっていたかもしれない。
最後の最後に油断して、勝ち星を失ってしまった。
そんな僕の怠慢プレーも顧問の先生には見抜かれていて、僕は叱られた。
「最後の1点は完全にお前のせいや。
お前の基準で、もう大丈夫っていうのを勝手に決めるなよ。
攻めの時は、50分の中で1回でも相手を出し抜ければOK。
でもな、守りの時は50分の中で1回たりとも相手にやられたらダメなんよ。
50分間集中して守り切って、ようやく英雄になれるんや。」
サッカーのディフェンスとしての教訓で僕は覚えていたけれど、受験勉強にも通ずるところはあるよね。
最後の最後の瞬間まで、気を抜いたらダメだ。
いつでも身を投げ出して止めるだけの覚悟をしておかなければ。
最後の最後で気を抜いて、みすみす勝ち星を失ってもいいの?
最後まで集中して取り組もうよ。
ここまで一生懸命頑張ってきたんだから、より一層気を引き締めて、勝ちを取りにいこうね。
みんなの勝利を祈っている。
ではではまた明日。